エノモト ユキの気になる人!#1 映画『37セカンズ』主演・佳山 明さん

皆さん、こんにちは。Co-Co Life☆女子部 ライターの榎本佑季(脳性まひ)です。読者の皆さんに、今、榎本が注目しているCo-Co Life☆女子を紹介するこの企画。第一弾は、2020年2月7日公開の映画『37セカンズ』の主役に抜擢された佳山 明(かやま・めい)さん(25歳)。全国の障がいのある女性100名からオーディションで選ばれた彼女は、皆さんと同じCo-Co Life☆女子部 読者サポーターです! さっそく、突撃取材に行ってきました。

まずは映画についてご紹介します。
この映画は、障がいのある女性の成長を描いた感動作。

【ストーリー】
生まれたときに、たった37秒息をしていなかったことで、脳性まひという障がいを抱えてしまった主人公・貴田(たかだ)ユマ。人気漫画家で、親友のサヤカのゴーストライターをしながら、ひっそりと生活している。一緒に暮らす母親は、過保護でユマの世話をすることが唯一の生きがい。そんな日常が息苦しく感じ始めたユマは、自立を考え、思い切って自作の漫画を出版社に持ち込む。しかし、女性編集長に「人生経験のない作家にいい作品は書けない」と一蹴されてしまう。そのとき、ユマの中で秘めていた何かが目覚め始める。様々な人との出会いを重ねながら、これまでの世界を脱するため、夢と直感を信じて道を開いていくユマ。その先で彼女を待ち受けていたものとは……。

大きなポイントは「障がい者のリアル」が丁寧に描かれているところです。
過保護気味になってしまう母親との関係や、障がい者に慣れていない異性とのやり取りなど、私たちCo-Co Life☆女子にとって、とても共感できるシーンがたくさん。
この映画がこれほどまでにリアリティを感じるのは、やはり実際に障がいのある佳山さんが演じているところにあると思います。
実は監督が、健常者の俳優が障がいのある人を演じることに疑問を持ち、障がいのある女性のオーディションを行ったそうです。

今回、佳山さんにインタビューを行ったのは、東京・慶応義塾大学で行われた上映会&トークショーの前。ハードなスケジュールのさなか、Co-Co Life☆女子部の読者に向けてお話しいただきました。

佳山 明さん(右)はとってもキュートで素敵な方でした!

―オーディションを受けようと思ったきっかけを教えてください。

佳山さん「オーディションを受けることで、何か見えてくるものがあればと思って受けました。」

―実は佳山さんが主役に決定したことにより、主人公の障がいの設定を「出生時のアクシデントで脳性まひになった」と変えたそうですね。『37セカンズ』というタイトルもお母さまから聞いたエピソードがもとになっているとか。

佳山さん「そうですね。最初は私に寄せていただいているので、気恥ずかしさもありました。でも、その分、物語としてリアルになり、グッっとくるものがありました。」

-撮影時に印象に残っているシーンや、共演者の皆さんとのエピソードを教えてください。

佳山さん「初めての映画出演だったので、どのシーンも印象に残っています。今浮かぶのは、夜の街を疾走するシーンです。私も実際に夜の街を出歩くことがありますが、撮影では、また景色が違って見えました。また撮影時には、私が緊張していると共演者のみなさんが声をかけてくださって、いろいろな話をしてくださいました。皆さんが明るく話しかけて下さったことで、気持ちが和みました。障がい者としてではなく、『1人の人』として、皆さんが向き合ってくださったのが嬉しかったです。
実は撮影期間中、滞在していた東京のマンションに母親役の神野美鈴さんが泊まりに来て下さったんです。まるで本当の母娘のように、一緒にデパートにお買い物にも行きました。」

―この映画のテーマは「母親からの自立」ですが、佳山さんご自身は、自立についてどうお考えでしょうか?

佳山さん「現在関西で一人暮らしをしています。1日に3時間ほど、ヘルパーさんに来ていただき、調理などをしてくださいます。やはり自分一人では出来ないことも多く、誰かの手を借りなくてはいけないという時にもどかしさを感じます。」

―「障がい者が日々の生活で感じるもどかしさ」は映画の中でも表現されていますね。主人公のユマが母親と喧嘩し、朝まで一人でお風呂に入っているシーンは、親と喧嘩しても、介助をしてもらわなければ生活出来ない(作中では、お風呂から出られない)という「障がい者のリアル」が描かれていて、胸が痛くなりました。

佳山さん「そうですね。『自立とは何か』ということを考えたら、私もまだまだ自立できていないなと感じますね。」

―最後に、Co-Co Life☆女子部の読者サポーターにメッセージをお願いします。

佳山さん「この作品は、当事者である私が演じることで、読者の皆さんからもリアリティを感じられる作品になっていると思います。当事者にこそ見ていただき、温かなパワーになれば嬉しいです。」

初めての映画出演で、ヌードシーンなどにも果敢に挑戦し、体当たりの演技を見せてくれた佳山さん。迫真の演技で、より障がいのある人たちの現状を伝えられる作品になっています。

慶応義塾大学の旧図書館の前でパチリ☆

取材の後に行われたトークショーでは、佳山さんのほか、風俗嬢・舞(まい)役の渡辺真紀子さん・クマ役のくましのよしひこさん、そしてこのトークショーを主催した慶応義塾大学文学部の岡原正幸教授が登壇しました。

左から佳山明さん・渡辺真紀子さん・岡原正幸教授・くましのよしひこさん

トークショーで、特に印象的だったのは、岡原正幸教授の言葉。
「この映画の宣伝をするときに、障がいのことを前面に出さなければならないのは、日本がまだまだだということ。いずれは、障がいを前面に出さなくてもいいようになればいい。そのためには、相模原の事件のようなことが起きたら、一つ一つ潰していかなければならない。」

この言葉で、私は日本社会の障がい者に対する意識の現実を再認識させられました。日常生活の中でも、障がいのある人に対する「心ない言葉」や「無意識な行動」に傷つくことがあります。だからこそ私は「今まで障がいのある人に関わったことのない人」にこそ、この映画を見てもらい、相互理解の一助になれば良いと思います。

イベントの最後に『37セカンズ』の監督であるHikariさんよりサプライズメッセージが!
「この映画は、障がい者というよりも1人の女性が成長していく物語だと思って制作しました。」

私もこの映画を見て感じたのは「自分の世界を広げていく大切さ」でした。ヒロインのユマは、舞や介護士の俊哉と出会うことにより、それまでの抑圧されていた状況を飛び出し、自分の世界を広げていきます。今置かれている状況に不満を持っていたり、新しい世界を広げてみたいという方の背中を押してくれる映画だと思います。

障がいのある女性の成長を、リアルに丁寧に描いた『37セカンズ』は2月7日全国ロードショー。とても共感度の高い作品なので、皆さんもぜひ映画館に足を運んでみてください。

映画の詳細と劇場情報はこちら。

http://37seconds.jp/