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打越さく良先生の法律相談 連載第4回

【第4回】一方的に離婚と言われて、泣き寝入りすることはありません!

【Q】下肢障がい。結婚をしてから病気になり、義母や夫から「子どもも産めないなら離婚しろ」と言われました。夫の家は旧家なので、「跡取り」が必要なのは分かりますが、あまりに一方的で納得がいきません。障がいは離婚の理由になるのですか?


【A】病気になったときこそ、いたわってほしいのに、離婚だ?なんとひどいことを言うのでしょう。かっかと熱くなってくるときこそ、クールダウン、法律や裁判例からしてそんな情けのない言いぐさが通るのか、確認してみましょう。
 夫婦とも離婚したいなら、理由があろうとなかろうとできますが、夫婦の一方だけ離婚したいと言いだし、もう一方は離婚したくないときは、裁判所で、「婚姻を継続し難い重大な事由」民法770条1項5号があると認められなければ、離婚とはなりません。

 では、夫婦の一方が重病になったり障がいをもったりした場合でも、そのことだけで、「婚姻を継続し難い重大な事由」になるのでしょうか。実際に、妻が病気になったり障がいをもったりした場合に夫が離婚を請求した裁判例がいくつかあります。なんだか、切ないですよね。しかし、裁判所は、そのことだけで、「事由」があると認めることはありません。ご安心ください。

 裁判所は、障がいや病気だけで判断するのではなく、原告(離婚を請求する側)に障がい者や病者に対する誠意ある行動があるかどうかなども考慮して決めるようです。たとえば、結婚後11年で妻(59歳)がアルツハイマー病等に罹患し、その後寝たきりになり、夫(42歳)のことを認識できなくなっていた事案で、夫は勤務先を退職して夫の母とともに妻を看病しましたが、その後、妻は特別養護老人ホームに入所し、今でいう後見開始決定を受けました。夫は定期的に妻の見舞いをし、爪を切るなどの世話をしてきました。裁判所は離婚して別の女性との再婚を希望する夫の離婚請求を認めました(長野地裁平成2年9月17日判決)。
 他方で、夫の母や夫との関係からうつ病になった妻に対して夫が離婚を請求した事案では、裁判所は、夫が妻の治療に協力したり、治癒を待つこともなく、いったん別居したものの自宅に戻ってきた妻と向き合おうともせず、自身の実家に暮らし、子ども(5歳程度)に会いに行くこともしないことなどを指摘した上で、夫が妻の病気にチアする理解が深まれば、婚姻関係の改善も期待できるとして、離婚の請求を斥けました(名古屋高裁平成20年4月8日判決)。

 なお、性的不能の場合も直ちに離婚の「事由」にはなりません。一方的な性交拒否が愛情の喪失を示すようなものであったり、結婚前に性的不能であったことを知りながらそのことを伝えなかったような場合に、「事由」があると認められることがある程度です。
 結婚は双方の愛情がベース。愛情や信頼を失わせるようなことをしたわけでもないのに、一方的に離婚離婚といわれて泣き寝入りすることはありませんよ。

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