toggle

打越さく良先生の法律相談 連載第7回

【第7回】養育費の支払いに障がいの有無は関係ない

【Q】40代の男性です。1年前に重度半身麻痺の身体障害者になりました。妻と子どもが2人おり、仕事は休職中です(傷病手当を受給中)。そのせいで妻は精神不安定となり、別居しています。自分は実家で親と暮らし、妻と子どもは自宅のマンションで生活しています。妻はアルバイトを始めました。離婚を考えています。子どもの親権者は妻でいいと思っています。この場合、障害者でも養育費は支払い、かつ半々の財産分与も取られますか?また自分は自宅のマンションから出て行かなければならないでしょうか?


【A】障がいを負ったご本人自身がショックで心身正面で支えてもらいたいのに、配偶者が支えてくれない。とてもお辛いことでしょう。
 以下のような裁判例があります。妻がそ脳血栓となり、右半身不随となり(身体障害者第4級)、右手が使えず、右足も歩行困難です。しかし、夫は十分な看護をせず、離婚を迫り、突然家を出て、生活費も一切送金しません。妻は妻の親族からの借金等で何とか生活をしています。浦和地判昭和60年11月29日は、夫の行為は、離婚事由たる「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)にあたるとして、妻からの離婚請求を認めました。本件の妻の行為は「悪意の遺棄」にあたるとして、質問者の離婚請求も、認められる可能性があります。

 仮に、妻自身病気になりケアが必要な場合などで、別居が一方的とはいえないかもしれません。しかしその場合でも、相当長期間の別居となれば、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたるとして、やはり離婚請求が認められる余地があります。

 親権者でなくても、親である以上、子どもに対して扶養義務があり(民法877項1項)、養育費を払わなければなりません(民法766条)。障がいの有無ではなく、収入の金額で養育費の金額は算定されます。養育費については家庭裁判所が用いている算定表、その算定表を批判し日弁連が新たに策定した算定表のどちらも、web上にありますので、ご自身の傷病手当と先方のパート収入をあてはめてみて、養育費相当額を確認してみてください。
 財産分与(民法768条1項2項)は主として婚姻中に夫婦で蓄えた財産を名義を問わず原則として折半するものです。障がいがあるというだけではなく、そのため今後収入の見込みが乏しいのであればその事情を分与の際に考慮すべきだと主張することはできるでしょう。裁判官が一切の事情を考慮して、分与させるべきかどうか、また分与する額等を判断する立て前になっています。改正されていませんが、1996年の民法改正案要綱では現行法より財産分与について細かく、財産分与にあたり考慮すべき事情の例をあげ、夫婦の「心身の状況」もその一例として挙げています。ですから、障がい者であり就労が厳しいという見込みであれば、主張するといいでしょう。

 また、悪意の遺棄による離婚で精神的苦痛を受けさせたとして慰謝料を請求したりすることもできます。ただし、裁判所はおおむね慰謝料の認定は限定的で、認められても期待よりもずっと低いものです

>>「打越さく良先生の法律相談」一覧ページへ