Co-CoLife Vol.3

Co-CoLife Vol.3 page 14/24

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息子から初めて「ママ」と呼ばれた時には、彼を産んでからすでに4年の月日が流れていました。「一生この子から『ママ』という言葉は聞けないのではないか」。そう思っていたので、この日、家族は泣きながら喜びまし....

息子から初めて「ママ」と呼ばれた時には、彼を産んでからすでに4年の月日が流れていました。「一生この子から『ママ』という言葉は聞けないのではないか」。そう思っていたので、この日、家族は泣きながら喜びました。1998年、アメリカ・フロリダ州で産声を上げた長男、エドワードことえっくん。それはそれはかわいくて、生まれてからずーっとその成長をひと時も見逃したくありませんでした。もともと明るい家族でしたが、さらにまぶしい太陽の日差しが舞い込んできたかのようでした。発育はすこぶる順調で、育児書より数カ月前にできることが多く“この子は天才!”と親ばかぶりを大いに発揮していました。10カ月で歩き、1歳では小走り、♪糸まきまき♪の手遊びなどを喜んでしていました。彼の姉、9歳違いのサンディと6歳違いのアリーナ、この2人が第二、第三の母となって、弟の面倒をよくみてくれました。私はそんな幸せな日々がずっと続くものだと思っていました。そして彼が1歳の時、夫の勤務先がフロリダ州から日本になり帰国、おじいちゃん、おばあちゃんの近くに住み……と何もかもが幸せに包まれていました。ところが生まれてから2年半。ちょうど一番かわいい時期に、異変に気が付き始めます。「耳が聞こえない?」「名前を呼ばれても振り向かなくなった?」「あれ?今までできていたことができない!」早速発達障がいの専門医に検査をしていただき、診断された結果は「重度もしくは最重度の知的障がいを伴う典型的な自閉症」。「自閉症って?」「治らない?」「生まれつき?」そのころからかなり多動※が目立ち、家族の協力なしでは主婦としての日常の買い物すらできない、ひと時も目を離せないなど、私は普通に暮らすことがままならなくなりました。「言葉が一生ない?」「幼稚園は?」「お友達は?」「習い事は?」「サッカーや野球は?」通っていた幼児教室は、集団の中で過ごすことができずすぐに辞め、診断後は、同じ障がいを伴う子たちの親子教室に移りました。しかしその中でも一際目立って集団に入れず、椅子にも座れない状態が半年以上続きました。再び自己嫌悪に陥った私は、いろいろな可能性が一気にかき消され、「免許は?」「仕事は?」「恋人は?」「結婚は?」「子どもは?」「すべて無理?」「生きている意味は?一緒に死んだ方がいいの?」と世界の隅に追いやられました。救いの手を求めて、毎晩彼が眠りにつくと、インターネットで検索する日々が始まりました。「自閉症の早期教育を受けると改善の見込みあり」という朗報。「何をすれば?」調べに調べた結果、私たち家族は再び日本を離れアメリカへ戻ります。息子の早期療14末吉景子さん21歳でアメリカ人と結婚、渡米し3児の母に。現在シングルマザーとして日本に帰国。2010年『えっくんと自閉症─ABAアメリカ早期療育の記録(グラフ社)』を出版。ABAセラピスト、パステル絵画インストラクター、絵カード店オーナーとして活躍中。4月からは「マザーズサポート心のケア」をスタート予定。手記を寄せていただいたのは知的障がい、自閉症を伴う息子とともに生きる障がいのある子を持つということ親の愛――実感できないとたまらなく不安なのに、あり過ぎると重荷になる。あきれるほどに不器用で、恥ずかしくなるくらいストレート、ときに誤解や葛藤も。でもどうぞ丸ごと受け取ってください。そして愛されていることに自信を持ってもっともっと輝いてください。世界の隅に追いやられて明るい家族に舞い込んできたさらにまぶしい太陽の日差しスモールステップでの成長が私の生きる励みに生後2日目。自宅にて編集:加茂桂子デザイン:竹内有布子